「消費者を動かす」、動かされてなるものか

ネット広告に関わりながら、広告分野の方とお話ししていると違和感を抱くことがたまにあるのですが、その中に「消費者を動かす」という言葉があります。広告業界でよく使われる言葉のようですが、私は好きにはなれません。私自身、消費者として動かされてなるものかと思います。とてもプロダクトアウト的な言葉に聞こえてしまうのです。消費者を動かすのではなく、消費者は自らの意思で動くのです。広告のコピーで動くわけではありません。

広告は消費者を無理やり動かすのではなく、消費者が興味を持ち、手に入れたいと思っている商品やサービスにスムーズにご案内するものだと思っています。そうでないと広告ってただ邪魔なものになってしまいかねませんもの。私って頑固なのかなぁ。

 

安さの裏側

日本はデフレということで長い間いろんなものの価格がずっと安いままです。安く買えるというのは消費者にとってはとても良いことです。より安く買おうとするのは当たり前ですし、値引き交渉が買い物の醍醐味だったりします。

一方で、売り手は安く売るためにいろんな工夫をします。商品や材料をできるだけ安く仕入れ、無駄を省き効率的に作業して余分な経費が掛からないようにします。コストダウンがイノベーションを生むこともあります。安く売るための努力はとても大切です。

ですが、行き過ぎるといろんな不都合も起こってしまいます。偽装などズルをする人もでてきます(日本人はこういうズルは大嫌いです)。そして、それでもまだ安くするために、労働賃金の安い海外で作る、合理化と称して手を抜く、そして労働条件を下げるなど・・・、書いてて暗い気持になります。ものやサービスを安く手に入れられるとラッキーだと思いますが、こんなはずじゃなかったってことになってしまっています。

そもそも価格というものはが安ければなんでもいいんでしょうか?「安いから買う」というより「欲しいと思っているものが適切な価格だから買う」というのが正しい。欲しい、自分のものにしたい理由はいろいろあると思いますが、そもそも物を手に入れるという必要性があって買うわけです。欲しいと思う気持ちと価格のバランスが大事。ものの価格は本来ならば需要と供給のバランスで決まります。安いからという理由だけで売買されることはありません。

いわゆるブラック企業の中には安さを売りにしている会社が多くリストアップされています。安さを追求するとどうしても人件費も下げざるを得ない。安さは、そこに働いている人たちの生活を犠牲にして成り立っているものかもしれません。働き方を見直すうえで、この視点もはずせないと思います。

「価格」は最終兵器です。価格だけで勝負することなく本来の商品やサービスの付加価値を提供することで適切な対価をいただくというのが本来の市場の在り方だと思います。

「送料無料」を考えよう

ここ数日、宅配事業者さんがとても大変なことになっているという報道が目につきます。これは、少し前から言われ始めていたのですが、ネット通販の伸びによって宅配便の物量の増加が甚だしく、現場のドライバーの人手不足のためにサービスの維持が難しくなっているということのようです。

「宅配」は消費者に商品を届けるためにとても重要なインフラです。ネット通販は社会にとっても欠くことができないサービスになっており、まだまだ伸びると予測されています。その要の部分がへたるということはネット通販の未来にもかかわることです。

我が家には毎日のように宅配便が届くので、このような報道を見ると「ゴメンナサイ」と思ってしまいます。数年前、深夜に東名高速を車で移動していたときに、クロネコヤマトの大型のトラックが何台も行きかうのに遭遇し、この人たちがネット通販を支えているんだなとジワジワと感動したのを思い出しました。

宅配事業の業界では様々な工夫や改善に取り組んでいると思いますが、劇的によくなるイノベーションが出てくるまでは、消費者の側でも少し考えてみることが必要なのはないでしょうか?

1.送料無料のこと

ネット通販では、「送料無料」というコピーが最強のコピーの一つです。消費者はとにかく少しでも安くというのを求めがちです。商品代金で差別化できないのなら送料で差別化なのかもしれませんが、宅配便のトラックの燃料やドライバーの人件費はどこかで誰かが負担しないといけない。「タダ(無料)」ではないということです。誰かがこの負担をしないとならない。もちろん無駄なく効率的に安価にサービスを提供するのは企業の使命でもありますが、一定を越えると持続不可能になってしまいます。

私は普段「送料無料」の言葉は気にしないようにしています。「あと○○円で送料無料」となっても必要なものだけを買います。また、どれぐらい寄与できるかは分かりませんが、できるだけ近い事業者から買うようにもしています。トラック何台も乗り継いでくるよりもすぐ近くから配送されるほうがいいんじゃないかと思いますが、このあたり物流の方にお話しを聞いてみたいです。

2.すぐ届くということ

「明日届く」から「「今日届く」そして「1時間で届く」とどんどん配送されるまでの時間が短くなっています。便利は便利なんですが、そこまで切迫して入手しなければならないものばかりではありません。もう少しゆっくりでもいいと思います。特別に早くほしいときはその分、特急分の料金の上乗せを受け入れる気持ちが必要だと思います。実際、他のサービスでは特急料金の上乗せは当たり前になっています。

3.いつでも何度でも配達してもらえるということ

再配達が大変負担になっているようです。我が家でもしょっちゅう再配達をお願いしており、耳が痛いです。高齢の母は在宅していることが多いのですが、耳が遠いので宅配のドライバーさんが来たことに気が付かないということがよくあります。気が付くと不在票がはいっていたということがよくあります。宅配ボックスを備えることを考えなきゃですね。

なんでも安くて便利なのはいいのですが、過剰なサービスを求めることで、そこで働く人の体や生活を壊しているかもしれないということは、そしてその結果そのサービスが継続できないとしたら、それはサービスを受ける側も少し思いをはせることも必要なのではないでしょうか。